そんな中、この1/60イングラムにおいておそらく一番の悩みどころがこの下腿部のバランスです。

脚部を過剰に細く長くする昨今のトレンドからは短足扱いされがちで、あれこれ言ってますが「当時ものらしさ」も否定はしきれませんし、確かに下腿部外装は少し「短め」ではあります。とはいえこのキット、決して「脚が短い」ってことはないんですよ。つまり…?
解釈の正解を求めて設定や本編描写と比較しながらアレコレと考察していると、まったく工作方針が定まりません。

しかし劇場版以降の新メイン設定、設定なのに謎パースがついてるのとよく見るとめちゃくちゃ歪んでるので、この設定を根拠に脚部の長さを論じるのには無理があります。他の画稿とまったく整合性がとれてないし、このまま立体化したら足がデカすぎておかしいです。あくまでも画としてのカッコよさに全振りしてるのが出渕デザイン…。一方で、初期OVA版の設定はまだちゃんとまとまっていて安心感・安定感があります。
で。
久々に、普段あまり見返すことのない旧OVA版設定を見てみますと、旧キット1/60イングラムの下腿部って、実は完全に旧OVA版です。TV版名義のキットなのに踵上のテールランプ的モールドが旧設定になってしまってる、というのはしばしば指摘されるところですが、トータルのバランスに関しても旧設定の影響がかなり大きいというか、この旧OVA設定をちゃんと再現していることに驚きます。新設定と見比べて「なんか違う…」と気になる点が「設定に忠実」だったんだと。張り出しが足りないとされている膝アーマーの緩い曲線も、幅が広めの脛ラインも、よく分かんない角度で一体化しているアンクルガードも、全部設定通りです。
調べて今更知りましたけど、この1/60イングラムは旧OVA展開中に告知され、当時は1/48でのリリースって話だったんですって。テールランプ形状だけでなく、スケールが1/60といいつつ実測1/54なのもその名残りという説を見ましたが、そんな経緯を踏まえるといろんなことに合点がいきますね。
そして。
じゃぁ旧設定テイストなこのキット下腿部、新設定版としては「間違って」いるのか、って話ですけど。諸々を踏まえて見ると新設定は、各部のバランスこそ若干シュッとしてはいるものの、根本的な造形は変わってはいません。リファインであって別デザインではないので当たり前ですけど。(一方で「0080」における「リファイン」を手がけた御大の描いたデザインと考えると解釈がいろいろと飛躍してしまいそうになりますが…)
加えてなにより上述の通り、歪んでて各部のバランスの整合性がとれていませんので、信用できません(笑)。
以上を前提に、今度は新設定とキットを見比べます。
すると、旧設定のエッセンスを多分に含みながら新設定とも一定の整合性を保っている、という絶妙なバランスがよく分かります。悪く言えばどっち付かず、ということにもなってしまうのですが、ブレの大きいこの頃のアニメメカのデザインを技術的な制約の中で安価なプラキットとして立体化する上での落とし所としてはめちゃくちゃ頑張っていて、しっかりそれが形になっている傑作キットだということを改めて感じます。
ただ、下腿部外装が「短め」なのはやっぱり事実(やっとハナシが戻ってきました)。
じゃぁどうするか、なんですけど、決して脚が短いわけではないのでアレンジするなら外装の形状だけなんですけど、厄介なのが右脚のリボルバーカノン収納ギミック。外装の一部が開閉するため別パーツになってるので、単純にぶった切って延長、がとてもやりにくいですし、安易に脚を伸ばしがちな風潮には賛同しかねる立場としてはそれはやりたくない(笑)。
なにはともあれ、お手つき時点で接着して合わせ目消しを試みていたところを強引に分解します。

左はきれいにパッカーンできましたが、右前側だけはなぜかフレームとの接合ダボにまで接着剤を流していたようで見事に破壊…。
とりあえずバラせたので検討を進めます。
有名なテクニックの一つに、件の内部フレームと外装との接合ダボを無視して外装を一段上に接着する、っていうやり方があります。

こう。
造形もあいまって足首周りが若干寸詰まりに見えることもある本キットのアレンジとしては、お手軽でそれなりに有効な手段です。ただしダボ部の太さがそれなりにあるので、これだと外装が4mm近く上にずれることになり、さすがに足首周りのスカスカ感が強く出てしまうのが難点。
ということで、ダボを一度切り離し、「2mm」上にズラします。

強度が不安なのでこの後に真鍮線で軸打ち補強したりするんですけど、だったら最初から穴を貫通させてプラ棒でも突っ込んだ方が早くて確実だったかも。ともあれ、改修完了。
で、こうです。

たかが2mm、されど2mm。
膝アーマー先端と、大腿部外装の下側の切り欠きと、の重なり具合がギリギリすぎたところが微妙ですが改善できているのがポイント。一方で、足首側は少しスッキリしたとも言えるし、やっぱりスカスカに見えるとも言える。副産物的に、下腿部外装を取り付けたままだと足部の着脱に無理が生じ(て軸が折れ)る問題は解決できました。
ここから次どうするか、となるとアンクルガードに手を着けざるを得なくなるんですがそうなると「ほどほど」から徹底改修の域に踏み入ることになる気がするので躊躇ってしまいます。
全体像でこないだまでとの比較。

比べると違いが気になりますが、単体で見ればやっぱり「これはこれで」となります。もうこれでいいじゃん…とまた。
いやね、なんでこういちいち言い訳がましいのかと言えば、幼少期からのXX年越しの思い入れがあるし自称モデラー視点で今見ても高く評価できるキットだけに、「否定したくない」んですよ。手を入れるってことは、そのままではダメってことなので。そのままでも十分なんだけど、でももうちょっとだけ…みたいなところでバランスをとりたいっていう複雑な心情です。めんどくさいなもう。
さておき。
それよりもまずは、右脚のリボルバー収納部です。
お手つき時点では何もかも割り切って挟み込んで外装を接着してしまっていましたが、ここまで来たらもう少しなんとかしたい。

プロポーション以外でこのキットのいいところ一番は、やっぱりこのギミック。
イングラムの立体物なら絶対に再現して欲しい仕掛けで、子供ゴコロにめちゃくちゃテンションが上がるところです。簡易な作りではありますが、ちゃんとこういうプレイバリューを考えてくれているのが嬉しいですね。
ただ構造が簡素な分バレバレになってしまっているヒンジ部は、キレイに作るなら気を遣いたいところで、定番工作ポイントの一つでもあります。あと、必要以上にドンガバチョ(古っ)と開きすぎるのも難点。ここはやりましょう。
特に難しいことはなく、セオリー通りにヒンジ形状を変更しつつ外装の溝を埋めてやるだけです。

ヒンジが外から見えなくなり、開いた時に適度な角度で止まるようになりました。
ついでにリボルバー収納部を前方に拡大して、真っ直ぐに入れられるように…しましたがこれだとカバーが閉まりません…。もともと、内壁側にシリンダーの幅を逃がす穴が開いててさらに斜めに突っ込んでようやく収まるレベルでスペースがギリギリなので、設定通り下からせり上がるギミックでも仕込まないことには無理ですね。ソコまでやるのかといえば多分やらないけど。
で、こんだけあーだこーだ言いながら結局下腿部外装の造形的な落とし所はドコに定めるのよ、が定まらずじまいですが。
ではまた次回。
この記事へのコメント
yan
nuke
クッ…(-.-
yan
B劇場版モデルって当時から気づいてましたが仰る通りでビデオ版を急ごしらえで劇版に仕立てたとしか思えない仕様でしたね全身。するとあのズングリムックリな体系がピンポーンと。
で足ですが自分が思うのは正面のパネル?が横長すぎるのとパネル下の踝周りのグラマラス感が足りんのですよね、と思います。
nuke
はい、まさしくその辺が気になりポイントですよね。
んで、じゃあどうすんの、ですけれども。
どういう結論に至ってどうなったのか、は待て次号!!(笑)